【報告】田んぼ2030プロジェクト 第1回ミニフォーラム
「田んぼと生物・文化多様性:なぜ生物多様性が文化の多様性を守るのか」
日時:2022年8月19日(金)18:00~19:40 オンライン開催(Zoom)
参加者:約70名プログラム:
1.話題提供:「なぜ生物多様性が文化の多様性を守るのか」
古沢広祐さん(國學院大學客員教授/ラムサール・ネットワーク日本顧問)
2.参加者との意見交換
「地域の生物・文化多様性の事例を集めよう/おらが農村文化自慢」
※このイベントは地球環境基金の助成を受けて開催しました。
〔古沢さんの発表概要〕
時代動向へ関与してきたご自身の歴史をたどる形で、
1)反公害・自然保護・地域文化・有機農業
2)自然共生・共存の様々なすがた気候変動、生物多様性
3)日本と世界:食・農・環境のこれから
などについての概説。
とくに1992年の地球サミットでは気候変動枠組み条約と生物多様性条約の双子の条約が産まれ、リオ宣言、アジェンダ21、森林原則声明など国際環境レジーム(体制)を形成した。従来の発展様式(化石燃料型文明)が、気候変動枠組み条約によって終止符、転換を迫られ、人間中心(単線系モノカルチャー型文明)から、生物多様性条約(多様性と循環)を契機に生命文明の再構築が目指されようになった。
生物多様性条約に内在する潜在的可能性として、モノカルチャー型文明<価値の画一化・標準化・序列化>による自然支配・管理の拡大・膨張から、劣ったもの・後れたもの・捨て去るべき無価値な存在、絶滅危惧種など追いやられてきた存在に、新たな価値の光があたる。先住民の権利、小農民の権利の復権、伝統・文化の再発見などがある。
生物文化多様性とは:森林、里山、川、湖、干潟、海などの生態系(生物多様性)に支えられ、地域独自の衣食住、言葉、信仰、芸術など多様な文化、生活様式が育まれてきた。文化的な営みとしての田んぼや水路などの環境形成から、そこに多様な生きものが息づいてきた。自然と人間(文化)が互いを活かしながら存在する相互作用関係に注目し、それを一体的に保全する「生物文化多様性」という分野横断的な考え方が形成された。
そのほか
・世界重要農業遺産システム(GIAHS)日本では能登・佐渡他(13サイト)
・栽培・農耕の歴史と課題 食と農業と合成生物・ゲノム編集GMO・人獣共通感染症、ワンヘルスの考え方。地域循環共生圏などについて紹介。
※古沢さんのプレゼン資料(PDF):220819_田んぼ2030_ミニフォーラム_古沢
【意見交換】
中村浩二さん(金沢大学名誉教授)
「能登とイフガオの里山」世界農業遺産サイト「能登の里山里海」の活動紹介。認定10周年迎えた。佐渡市を迎えてトキ関係のシンポジウムを開催した。能登里山マイスターを育成し210名となった。フィリピンのイフガオ地区の棚田との交流も実施している。イフガオでも100人以上育っており、日本にも招待したりした。
現在はオンラインを活用している。国連大学サステナビリティ高等研究所、JICA等もあり国際的な取り組みは実施しやすい。縦割りにならずつないでいくことが大切。
舩橋玲二さん(NPO田んぼ理事長/ラムネットJ理事)
世界農業遺産大崎耕土として認定されて今年で5年になる。生きもの認証マーク米、フィールドミュージアムの活動などをしている。文化多様性はとらえどころがなく、難しいが屋敷林を中心にヒアリングをかけている。伝承・生活習慣との関連が出てくるかどうかの検証をする。
1960年代、東京オリンピック後生活習慣が急激に変化してしまった。先日洪水があったが、そのとき「ドジョウを捕った人がいるか」との会話があったが、これは水害のときにドジョウが水路に集まってくる習性を知っている農家さんたちの挨拶。サギの糞を肥料として使ってきた地方ではサギのコロニーが継続してきた。文化があって残されてきた自然がある、情報を集めていきたい。
(報告:安藤)