第9回田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト地域交流会in愛知(豊田市)
―サシバのすめる水田作り―
1.開催趣旨
ラムサール・ネットワーク日本(以下、RNJ)は、ラムサール条約および生物多様性条約の水田決議に基づく水田の生物多様性向上を、国際的・国内的に継続的に推進してきた。
愛知ターゲットの達成目標年である2020年に向けて、水田における生物多様性向上を図るべく「田んぼの生物多様性向上の10年プロジェクト」行動計画を作成し、具体的な取組み内容を提示して、実践する仲間の拡大に努めている。
愛知県豊田市自然観察の森では、サシバがすめる森と田んぼや湿地の復元に取り組んでいる。また森に接する水田で稲作を営んでいる農家の方々や地域の農業関係団体、行政、企業、NGOなどとも連携して、多くの生きものたちとともに暮らす地域づくりへの協力を行っている。ラムサール・ネットワーク日本では、この取組をいっそう進めるために、豊田市自然観察の森といっしょに田んぼの生物多様性向上10年プロジェクトの地域交流会を開いた。
2.実施状況
(1)開催日 2018年6月17日(日)
(2)会 場 豊田市自然観察の森ネイチャーセンター研修室
(3)実施体制
主催 NPO法人ラムサール・ネットワーク日本
共催 豊田市自然観察の森(指定管理者:日本野鳥の会)
後援 環境省中部地方環境事務所/農林水産省東海農政局/愛知県/豊田市/JA全農 /JAあいち豊田
協力 公益財団法人日本野鳥の会
(4)プログラム
第1部 田んぼめぐり(10時~12時)
集合:豊田市自然観察の森ネイチャーセンター前
参加者数: 34名 (バス2台)
内容:川島賢治氏(豊田市自然観察の森チーフレンジャー)と大畑孝二氏(日本野鳥の会施設運営室長)案内で、自然観察の森内のサシバ復活のため水田や低茎湿性草地の復元作業が行われているカエルの谷と、ラムサール条約湿地「東海丘陵湧水湿地群」のひとつの矢並湿地を訪れ、湿地環境と管理等の活動内容の解説を受けた。
第2部 地域交流会(13時~17時)
会場:豊田市自然観察の森ネイチャーセンター研修室
参加者数: 72名
1)基調報告
ラムネットJ共同代表の呉地正行
「田んぼの10年プロジェクトが結ぶサシバと人の未来」と題して、田んぼの10年プロジェクトの紹介と、サシバが冬を越すフィリピンの水田地域と今後の連携について報告を行った。
2)地域からの報告
豊田市内や愛知県内での活動として、次のような報告が行われた。
①「サシバのすめる森と水田づくり・豊田市自然観察の森の取組み」大畑孝二氏(日本野鳥の会)
サシバの再営巣を目指して水田や湿地環境の復元整備を行っている。
②「田んぼの学校 エコたん:稲の自然栽培の試み」高山博好氏(NPO法人びすたーり代表)
障がい者の働く場所として無農薬・無肥料・不耕起稲作を行うともに、市民と田んぼの生きものとのふれあいの場を提供している。
③「トヨタ自動車新研究開発事業におけるサシバとの共存をはかる環境保全の取組み」村山 浩二郎氏(トヨタ自動車株式会社)
事業地内の水田・湿地や里山環境で、農家の協力を得て生きもののための管理を行っている。
④「愛知県における水田の生物多様性保全の実践取組」田中雄一氏(愛知県農業総合試験場主任研究員)
水田と水路間の魚道や小動物が水路から脱出するためのカエルネットなどの技術や工作物を開発している。
⑤「生きものブランド米:赤とんぼ米の取組み」三橋豊氏(JAあいち豊田)
協力農家とともに使用農薬の制限など生きものに配慮した特別栽培米の発展につとめている。
3)パネルディスカッション
コーディネーター:夏原由博氏教授(名古屋大学)、
コメンテーター:日野輝明教授(名城大学でサシバ復活の谷戸の環境管理とモニタリングを実施)、牛山克己博士(北海道宮島沼湿地センターでガン類の保全と食害低減のため農家との協力)、
パネラー:基調報告
・地域からの報告者で、稲作農家ためにも生物多様性向上が重要なこと、研究技術開発拠点と生産者団体や市民団体など広い連携が重要なことが議論された。
今後は、愛知県内での発展のさらに進むとともの、活動内容が広く全国に紹介されることを期待して、交流会は終了した。
(地球環境基金助成事業、ICEBA2018のプレイベント)
実施状況写真
第1部 田んぼめぐり
第2部 地域交流会