田んぼの生物・文化多様性2030プロジェクトは、2022年4月20日、「自然とともに~ネイチャーポジティブな農業への変革をめざして」を、オンラインで開催しました。参加者は約80名でした。
道家哲平さん(国際自然保護連合日本委員会)がフォーラムの主旨を説明した後、呉地正行さん(ラムネットJ)が水田の生物多様性向上の取り組みの経緯を報告し、続いて金井 裕さんが「ポスト2020目標と新水田目標2030」について説明しました。
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第1部 事例報告
1.「有機稲作農家とみどりの食料システム戦略」舘野廣幸(民間稲作研究所/かえる農園)
田んぼに生える草をすきこんで肥料にし、生きもの、特にカエルが支える有機農業を実施しています。雑草に対しても科学的アプローチを取り、収量も確保できています。
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2.「コメを売るからコトを売る」~国民理解へ向けて~ 伊藤秀雄(伊豆沼農産)
ラムサール条約湿地の伊豆沼で地元の農産物の生産・加工・販売をしています。地元の人々と共に地域・人づくりに取り組み、ふゆみず田んぼの活動そのものへファンディングを求めて首都圏の企業にアプローチしています。
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3.「谷津田の自然管理の手法から生物多様性を学ぶ」 手塚幸夫(房総野生生物研究所)
野生生物の保護管理から有機農業まで 幅広い活動をしています。
伝統的な管理をしてきた谷津田の水・自然管理は、現在でも通用する技術で、多様な生態系と生きものが育まれています。
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第2部 パネルディスカッション
「みんなが参加できる行動事例を考えようー課題解決に向けて」
コーディネーター:呉地正行 パネラー:登壇者全員
舘野:多くの農家は、田んぼの生き物の存在は付録的に捉えている。害虫・雑草退治に励む農家の考え方を変える必要がある。
伊藤:農業者にとって生きもの・生物多様性の話は伝わりにくい。導入として農業者が理解しやすい仕組み・話し合いの場所が必要で、国民にとっても同じことが言える。
手塚:「農薬を使ってはダメ」ではなく、里山の環境を学びながら「農薬を使わなくても大丈夫」というアプローチをとっている。農業は生物多様性に支えられ、生物多様性は農業に支えられるという双方向の考え方を子どもたちに伝えることが大切だと思う。
道家:キーワードは「生きものの力を借りる農法」。農業分野のNbS(自然を基盤とした解決策)は生きものの力を借りる農業のことだと思います。生きものの視点を持った人・農家さんを増やしてくという方向性が良いのでは。
呉地:日本の「いただきます」には生物多様性の重要性が込められている。生きものに助けられる農業を掘り下げながら、循環する仕組みを考えたい。
金井:地域での活動の共有・国内外の枠組み目標との関連性を示し、方向性の議論などもできて良いスタートになったと思う。ここでの議論が国の施策に活かされるような活動を組み立てるのもラムネットJの役割であり、田んぼ2030プロジェクトがプラットフォームの役割を果たせたらと思う。
※協賛企業等
・運営:ラムサール・ネットワーク日本
・主催:国際自然保護連合日本委員会
・共催:日本自然保護協会、ラムサール・ネットワーク日本、Change Our Next Decade、UNDB市民ネットワーク、アースデイ・エブリデイ、野生生物保全論研究会
・協力:環境省