
ラムサール・ネットワーク日本など40団体は、「共同声明:節水型乾田直播の安易な普及を控え、水田の多面的機能の維持を求める」を2025年10月27日付で発表しました。この共同声明は、ラムサール・ネットワーク日本とOKシードプロジェクト、日本消費者連盟が呼びかけたもので、賛環境団体・消費者団体・食の安全に関わる団体などが賛同しています。
この声明文は、2025年10月27日付で農林水産大臣宛に送付されました。また、衆参両議院の農林水産委員に対しても、働きかけをする予定です。
この共同声明が発表された背景には、農林水産省が、戦略的農林水産研究推進事業として節水型乾田直播(ちょくは)の推進を据えたことがあります。
従来の日本型稲作では、田植え前に田んぼを代掻き(しろかき)して湛水し、ハウスや育苗器で種籾から育てた苗を田んぼに植え(田植え)、その後も長期間水を張ったまま(湛水)管理します。一方、節水型乾田直播とは「田植え」を省き、乾いた田んぼ(乾田)に直接タネを播いて(直播)、種蒔き後も、水をできるだけ使わずにイネを育てる農法です。
節水型乾田直播では、「田植え」を行わず、その後の水管理も省力化できるので、その労力を大幅に削減できるメリットがあるといわれています。しかし、狭い面積の田んぼでは節水型乾田直播を実施することが難しく、田んぼの大規模化や高額の設備投資が必要となります。日本のコメ生産のほとんどは小規模家族農家によって支えられていますが、従来の栽培方法では想定されていない大規模な節水型乾田直播を進めれば、多くの農家の離農、さらには農村の消失につながる可能性が否定できません。
また、田んぼ(水田)は湛水することで連作障害を生まず、農薬・化学肥料に依存せず、持続的・安定的にコメを生産できる画期的な農法です。さらに、田んぼには、治水・防災機能、水源涵養・水質浄化機能、気候緩和機能、そして生物多様性を保全する機能など、多面的な役割がありますが、乾田化することでこれらの機能が大幅に損なわれることになります。
乾田直播すべてを否定するわけではありませんが、安易に推進するには多くの疑問があります。そして、農林水産省は、水田と農家を守ることにこそ注力すべきでしょう。
共同声明の本文は下記からダウンロードできます。
共同声明:節水型乾田直播の安易な普及を控え、水田の多面的機能の維持を求める